ハイパースペクトルカメラとは?

「ハイパースペクトルカメラ」とは、当社が2007年から発売している「内蔵スキャン型のハイパースペクトルイメージングシステム」を指します。

それまで、大掛かりで扱いづらい外部ステージスキャン方式(現在も輸入商社が扱っているものの大多数はこの方式)であったものを、スキャン機構をカメラに内蔵し、カメラ単体で分光情報を取得できるようにしたのが、その始まりです。

このハイパースペクトルカメラ市場は、2007年より当社が販売し、お客様と共に広めてきた市場です。

それまでは、他社は「ハイパースペクトルイメージャー」や、「イメージングスペクトルスコピー」といった名称で販売していたのですが、当社の活動により「ハイパースペクトルカメラ」という名称が一般化したことで、そこに他社も同調してきたというのが実際のところです。当社の広めているハイパースペクトルカメラとは、顕微鏡でも、望遠鏡でも手軽に撮影でき、お客様の課題解決のために柔軟に対応できる、そのようなカメラを指しています。

エバ・ジャパンはハイパースペクトルカメラの国産メーカーであり、リーディングカンパニーです。

近年、様々な分野の研究・産業用途において、ハイパースペクトルカメラの活用が進みつつありますが、本来解決したい課題と、各製品の特性の違いとの間にずれがあった為に、「ハイパースペクトルカメラ(他社製)を導入しても課題解決に至らなかった」といったご相談を受けるケースも増えてきています。

これは、ハイパースペクトルカメラはあくまで手段であり、課題解決の目的ではないことをご理解して頂けていないからだと思います。あくまでR&D、研究・開発用途であり、その研究から得た結果をカメラ化しないと、課題解決のための利用ができません。

本記事では、ハイパースペクトルカメラの導入をご検討されている企業や研究機関のご担当者様向けに、ハイパースペクトルカメラの使用目的、測定方法、当社カメラ(国産)と海外製カメラの違い、事例などを交え、選定に失敗しないためのポイントを解説いたします。

ハイパースペクトルカメラとは

ハイパースペクトルカメラとは、画像の1ピクセルごとに分光情報を取得するカメラです。

対象の波長を計測することで、通常のカメラでは捉えられない、物の化学特性や状態、人間のイメージを共有(数値化)することで、画像検査の限界を突破する技術です。

ハイパースペクトルカメラの使用目的

ハイパースペクトルカメラはR&Dでの活用はもちろんですが、お客様の様々な課題をお伺いする中で、単なるR&D用の技術であるのみならず、現場の課題解決の為の技術としてご期待を頂くようになりました。

そのご期待に応えるべく、当社は15年以上、独自の研究開発を進め、お客様の課題一件一件に対応したアルゴリズムを搭載した専用カメラ、「ターゲットスペクトルカメラ」など、現場課題の解決に向けたスペクトルソリューションを展開しています。

「目的」はあくまでも現場の課題に応えるソリューションであり、「ハイパースペクトルカメラ」はそれに至るための手段であると、当社は考えております。

では、現場を見据えたハイパースペクトルカメラの選び方とは、いったいどうあるべきでしょうか。次項よりそのポイントをご紹介します。

ハイパースペクトルカメラを選ぶ際のポイント

①ハイパースペクトルカメラの種類

ハイパースペクトルカメラは分光方式により大きく分類することができ、回折格子やプリズムをベースとした波長分散タイプと、Fabry-Perotなどの干渉技術をベースとした干渉フィルタタイプに分けられます。

波長分散タイプの特徴

波長分散タイプは分光精度の信頼性が最も高いのですが、ライン分光タイプであるため、2次元画像を取得するために空間方向のスキャンを要します。本タイプの多くのカメラは外部スキャン機構を要するため、大がかりな装置となり、インライン以外での計測には不適となってしまいます。

干渉フィルタタイプの特徴

干渉フィルタタイプは外部装置を要さず、On-chip型のカメラは1フレームで全波長の高速撮影が可能な利点がありますが、波長毎の波長分解能が一定でなく、波長間の分離精度の低下、LCTF(液晶チューナブルフィルタ)、AOTF(音響チューナブルフィルタ)は偏光の影響、On-chip型は波長(画素)間のクロストークや空間上の同一点の分光画像が取得できないといった特性のため、分光精度の信頼性が劣ります。

ハイパースペクトルデータ取得の目的がソリューション確立のためのアルゴリズム作成にある点を考えると、高精度な分光画像の取得が求められることから、これらの欠点は問題となります。

当社ハイパースペクトルカメラの特徴

当社ハイパースペクトルカメラは、以下の図のように、波長分散タイプで世界最高水準の分光精度を有するだけでなく、スキャン機構をカメラに内蔵していることから外部機構は不要です。カメラ単体で分光画像を取得できるため、インライン・オフラインのいずれにも容易に適用でき、「ポータブルに持ち運びできる」「顕微鏡など他の機器に接続できる」など、数多くの利点を有しています。

②仕様の確認

各社の提示する仕様項目が一様でないことも、カメラの選定を難しくしている一因となっています。そこで、仕様を確認する際の注意点を記載いたします。

波長分解能:

FWHM(半値全幅)とHWHM(半値半幅)

各社の提示している「波長分解能」には、「半値幅」の場合と「サンプリング間隔」の場合が混在しており、注意が必要です。

半値幅はFWHM (Full Width at Half Maximum:半値全幅)とも言い、分光された光の強度がピーク値の半分になる波長幅のことで、この値が隣り合う2つの波長を区別することのできる本来の波長分解能の値となります(右図参照)。

一方、サンプリング間隔は、分光情報をセンサが取得している間隔のことで、半値幅より小さくなりますが、この値を波長分解能として表記している場合があるので、確認が必要です。

波長数(cf. 波長チャンネル数、バンド数、波長データ数、波長解像度):

様々な表記パターンがありますが、いずれも出力される分光波長の数を表します。この値も、半値幅で出力するか、サンプリング間隔で出力するかにより数が異なりますので、確認が必要です。

なお、波長分解能が高く、波長数が多ければ多いほど画像は暗くなるため、トレードオフとして撮影時間が長くなります。ですので、波長分解能がよければいいというものでもなく、目的に合った分解能を実現することをお勧めします。

当社は0.1nm〜数十nmまで、お客様のご要望に合わせてカスタム製造が可能です。

画像解像度(cf. 空間解像度、空間チャンネル数、画素数):

一般に、1回の撮影で取得する画素数のことを示していますが、様々な表記パターンがあります。外部スキャンタイプのハイパースペクトルカメラの場合、カメラ単体では1ラインの情報のみ取得するため、1次元の数値(1つの数値のみ。通常は、タテ×ヨコの2次元)が記載されています。

なお、1ラインを継続して撮り続ける場合は、簡単に何百万画素にもなりますので注意が必要です(その場合短冊のような画像データになります)。画像解像度が大きいから全てがいいという訳ではありません。

分光方式:

➀で上述した通り、分光方式により精度や環境適応性が異なりますので、目的に合致しているかの確認が必要です。

例えば、歪曲収差がかかることも多く、顕微鏡に接続すると、画像が半分ほどしか適切に撮れないものもあります。

なお、目的に合っていないものを選んだ場合は全く無駄になることがありますので、ご注意ください。

サイズ・重量:

一般に、カメラ単体の数値が記載されているため、実際に必要なシステム全体のサイズや重量も確認することが必要です。

以上、仕様確認上のいくつかの注意点ですが、実際のカメラが目的の用途に合致するかは、表に出ている仕様だけでは通常わからないため、必ずデモ等で実機を確認されることをお勧めしますご心配な場合は、是非お気軽に当社までお問い合わせください。

③課題解決へのサポート

そのメーカーが課題解決のためのソリューション技術を持っているかということは、ハイパースペクトルカメラを選ぶ際の重要なポイントです。

当社はハード・ソフト両面で、開発から製造までを一貫して行なっており、ハイパースペクトルカメラによる検討の後に、お客様の計測の評価対象に応じて、目的に合った専用カメラをハード・ソフト共に自由に設計、製造することが可能です。また、自社製造のため、サポート及び補償が迅速であるのも特徴です。

(参考:エバ・ジャパン ソリューションの流れ)

④その他(採用実績、特許、他社とのコラボ等)

国家機関、学校法人 及び企業での採用実績が十分ある

ハイパースペクトルカメラは近年広まってきつつある新しい技術であるが故に、前述したように、各社が出す仕様項目にもバラツキがあり、明確な比較基準がわかりづらい側面がありますが、最も確実なのは、その採用実績に着目することです。

当社は、様々なスペクトルイメージング技術を自社にて研究開発し、特許取得、製造、販売、アフターサポートまでを一貫して行う国産メーカーです。

分野を問わず、官公庁様、学校法人、企業様に数多く導入頂いており、国内No.1の納品実績を有しています。

【参考:納品実績(一部)】

パナソニック NEC 富士通研究所
東芝 富士通ゼネラル シャープ
日立製作所 ソニー セイコーエプソン
シチズン電子 パイオニア オムロン
安川電機 横河電機 京セラ
SCREENホールディングス ニコン オリンパス
キヤノン 富士フイルム ペンタックス
コニカミノルタ 三菱重工業 三菱重工交通機器エンジニアリング

学術論文での採用実績がある

当社製品は学術論文でも非常に多くの採用実績があります(下表)。

国内ユーザーによる論文発表実績
分野 論文数
食品・農業 28
美容・医療 32
工業 46
建築・インフラ 12
リモートセンシング 18
その他 11
合計 147

特許

当社は、画像1画素ごとに分光情報を取得する特許を取得していますので、当社のお客様は、他の特許に抵触することなく安心してお使いいただくことができます。

【参考:知財・特許】

他社とのコラボレーション

当社技術は多くのお客様に信頼頂いており、様々な協業へと発展しております。例えば、日本科学未来館様における当社ハイパースペクトルカメラの展示や、トヨタ車体様の医療車への当社バイタルカメラの搭載、NTT東日本様 NTTe-city Laboでの当社スマホアプリ「Vitarhythm」の常設展示、国立がん研究センター様とのスマートトイレの共同研究開発など、多種多様な機関との協業に取り組んでおり、その技術が社会実装されようとしています。

参考リンク:

【日本科学未来館での展示】

【医療車へのバイタルカメラの搭載】

【NTTe-city Labo スマホバイタル計測アプリ「Vitarhythm」の常設展示】

海外製ハイパースペクトルカメラの注意点

現在、日本国内で販売されているハイパースペクトルカメラは、当社の製品を除くと、大部分が海外製です。日本の取り扱いメーカーは輸入商社であることが多く、スペクトルコンサルができるようなシステムを持っている会社は皆無と言って良いでしょう。従って、購入後に目的に合った使い方が分からない、といったこともありますので、ご注意ください。

海外製ハイパースペクトルカメラの中には、スナップショット方式で手軽に使用できるものもありますが、分光精度が悪く、本来の目的である研究・開発の使用に適さないものが多く、注意が必要です。

また、波長分散方式を採用している製品もありますが、上述したように外部装置を必要とするものがほとんどで、装置自体が大がかりとなり、扱いづらいものとなっております。

さらには、海外製であるが故にソフトウェアが外国語のため、使用方法で分からないことがあったり、不具合やソフトウェアの改善希望があったとしても、海外性の場合は柔軟な対応が困難です。

尚、海外情勢や為替の影響により、納期や価格が変動することにも注意が必要となります。

当社は国産メーカーであり、ハードやソフトのカスタマイズなど柔軟に対応が可能です。カメラ導入後のアフターサービスも充実しており、お客様が実際に使えるところまでサポートいたします。

COLUMN:ハイパースペクトルカメラ選びの失敗談

ここでは、他社で購入したハイパースペクトルカメラから期待した成果が得られず、当社にご相談に来られたお客様のお声を一部ご紹介します。

大手企業 A社様

海外製の外部ラインスキャン型のものを導入しましたが、撮影設定時に1ラインしか撮れず、どこを見ているのか分からずピント調整が難しかったです…。

照明メーカーB社様

医療用の実験に2次元で可視域の分光情報が取得できるハイパースペクトルカメラを使用していましたが、視野角が狭かったため、対象からかなりの距離を離して撮影する必要があり、想像以上に計測が大変でした…。

C大学 准教授の方

​画像処理関連の研究を目的にハイパースペクトルカメラの利用を検討し、調査を進めたところ、レンタルサービスを行っている会社があったため依頼を行ったが、機器が送られてきたのみで、使用方法の説明が無く、取扱に時間が掛かり、思うような評価ができませんでした…。

E大学 教授の方

医用情報工学の動物実験において、海外製の干渉フィルタタイプのハイパースペクトルカメラを使用したところ、波長毎に撮影の時間差が生じ、かつ、偏光特性を受け、評価不可能な波長が発生し、学生の発表に十分なデータが取得できなかった…。

建設コンサルタント会社 F社様

土質の評価を行うために、海外製の外部ラインスキャン型を試用したが、目的とする物質の近赤外線の吸収ピークが全く出ておらず、科学的な根拠となるデータを取得できる信頼性に疑問を感たため、活用を見送った…。

G大学 教授の方

蛍光物質の蛍光波長の精査を行うために、海外製のOn-chip干渉フィルタタイプのハイパースペクトルカメラを試用したが、取得できる解像度が粗い上、波長毎に撮影位置にズレが生じてしまうため、上手くデータが取得できなかった…。

H大学 准教授の方

道路環境の光シミュレーションを行う目的で、200万円~、とホームページ上でPRしていた会社に問い合わせたが、質問への返答が大変遅い上、こちらの要望する技術的な質問に全く答えられず、学生の延長線上であるかのような対応に不安を感じた…。

大手企業 I様

展示会でよく見かけるハイパースペクトルカメラの活用検討を始めるべく、web調査の上、海外製品を扱う代理店から、デモと説明を受けたが、製品に関する知識がなく、当社の課題解決に対する的確な返答を得られず、単にカメラの購入を勧められ困惑した…。

大手企業 J様

将来的に検査ラインでの活用を見据え、海外製のハイパースペクトルカメラを導入したが、当初予定していた対象が評価できず、販売元へ問い合わせを行ったが、基礎検証~検査ライン化に向けた、まともなフォローを受けることができず、困ってしまった…。

住宅サービス会社 D社様

小型でポータブルの海外製のハイパースペクトルカメラを、屋外で、建物の計測に使用しましたが、屋外では感度が低く、評価に必要なスペクトルデータを取得できませんでした…。

EBA Japanのハイパースペクトルカメラが選ばれる理由

当社ハイパースペクトルカメラは国内No.1の納品実績を有しています。最後に、なぜ当社のハイパースペクトルカメラが選ばれるのか、その理由をまとめます。

①世界最高水準のスペクトル技術力

当社ハイパースペクトルカメラは、最も正確な分光情報が取得できる「波長分散タイプ」であり、お客様の立場に立ち続けた自社開発を続けていることから、世界最高水準の分光精度と利便性を有しています。

②お客様の課題解決まで伴走できるソリューション力

当社は、スペクトルカンパニーとして15年以上お客様とともに課題解決に取り組んできた中で蓄積してきたノウハウとともに、自社開発によるソリューション提供をしてまいりました。ですので、納品後もお客様とのお付き合いを続けており、ハイパースペクトルカメラの利用のみならず、常にその先のターゲット(目的)の解決を一緒に考え、お客様の利益に沿った提案をし続けています。

③豊富な実績、特許

納品実績をご覧頂ければ分かるとおり、当社は国内No.1のハイパースペクトルカメラ・メーカーであり、且つそれを裏付けるお客様の成果事例(学術論文掲載例含む)も数多くあることから、高い信頼を頂いております。また、スペクトル技術に関する特許も国際的に有しているため、海外においても安心してお使い頂くことができます。

まとめ

以上、「失敗しないハイパースペクトルカメラの選び方」についてお伝えしました。

本記事が、皆様の選択の一助となり、研究や課題解決にお役立ちできますことを心より願っております。

当社はリーディングカンパニーとして今後も市場を守っていく所存ですので、もし何かお困りのことがございましたら、他社様のことでも結構ですので、ご遠慮無くご相談ください。

また、本記事や当社のサービスに関してご質問等がございましたら、お気軽にお電話またはフォームよりお問合せください。

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